深谷山一心院 箱泉寺?その1
山頂には約3haの芝生が広がり、ハイキングコースとして人気の県立自然公園旭山。「深谷の荘」と呼ばれたこの一帯は、かつて新田開発が盛んで穀倉地帯として発展してきました。その旭山の麓にあるのが箱泉寺です。開基は天台宗の開祖・最澄の弟子、慈覚大師によると伝えられています。御本尊に備えるため、慈覚大師が独鈷(どっこく:仏具の一種)で山麓を掘ったところ、清冽な清水が滾々と湧き出てきたという。
いかなる旱魃でも涸れることのないこの清水は「独鈷水」と言われ、開基から1200年を経た今も湧き出ています。独鈷水のすぐ近くには、慈覚大師が泉を掘る時に、濡れた袈裟をかけたという栗の木、しだれ栗が見事な枝ぶりを見せています。ちなみに、箱泉寺という寺名は独鈷水を箱で囲んだことから名づけられ、この地域は「箱清水」と呼ばれています。
天台宗の寺として続いていた箱泉寺を、戦国時代に真言宗に改宗して中興させたのは俊光法印です。なぜ改宗したのかという理由について、「現在は京都の真言宗の智山派に入っていますが、昔の寺は世襲ではなく今のように組織が体系化されていなかったり、空き寺となっていた時期もあったりと荒廃していたため」と3代目川村運径住職は話しています。