しばらくは平穏な日々が
命がけでムサシを守りたいという気持ちには嘘はないのだが、いざとなると何もしてやれない自分が情けなく、只々詫びることぐらいしかできないが、当のムサシは、そんな私を責めることもなく、相変わらず親愛の情を全身で表しているだけである。そんな想いで布団に入ると、ひとしお愛おしさがこみ上げてきます。
こういうときは、いつもより長く会話をするのですが、ムサシは自分のことを話すことなどめったにありません。大抵は、私が一方的に話す内容にコメントする形で会話が進行するのですが、唯一仲間のワンちゃんの話になると、積極的になり、しばらくあっていないワンちゃんのことは特に気になるらしくて、名前を聞いただけで興味を示します。
うかつにも、このことに気がついたのは最近のことなのです。ムサシにしてみればそれなりに私たちへの気遣いから、あまり仲間のことを話さなかったようなのである。確かにそういわれてみれば、これまでは、ムサシ以外のワンちゃんにはあまり興味がなかったのかもしれない。だが、今は明らかにその頃とは違う気がしている。