花火が苦手なムサシ
ムサシがわが家に来たのは暑い盛りではありましたが、季節としては夏の終わりに近かったため、地元の夏まつりなどはとっくに終わってしまった時期でした。実質的に1年目を迎えたある日のこと、ちょうどその日は塩釜の港祭りの日で、夜は花火大会があるということだったので、ムサシにこれを見せてあげようと思ったのです。
人ごみを避けて少し離れた裏の公園に陣取り、花火の開始を待ちました。いよいよ点火され音が鳴り出した途端、ムサシは狂ったようにおびえて木陰に逃げ込みました。その様子が尋常ではなかったため、花火が止んだ一瞬の隙間を縫って早々に逃げ帰ったのですが、それでも震えがとまらなかったので、押入れに入れて布団をかけてやりました。
そういえば、彼の苦手はどうやら大きな音のようです。商店街を歩いているときも、シャッターの閉まる音を極端に嫌っていたのも同じ理由だったようです。そうだとすれば、花火のあの音は、彼にとって天地がひっくり返るような衝撃だったに違いありません。まだまだ理解が足りなかったことを反省させられた一日でした。