アツモノに懲りてナマスを吹く慎重さ
子供の喧嘩に親がでるのはおかしいと昔からよく言われてきたが、「犬の喧嘩に飼い主が出るなとは誰も言っていない」などと、勝手な理屈をならへながら、大人げなかったなどと反省するゆとりなど全くなく、怒り狂った毎日を過ごしたことをはっきり覚えています。というのも、その後、ムサシは大きな犬に脅えるようになってしまったからです。
そればかりか、噛み付かれた場所には絶対に近づかず、一回りスケールが小さくなったようにさえ感じられ、ショックの大きさは想像以上だったのだと、いまさらのように悔やまれました。しかしそこはムサシの底力、“オヤジもう大丈夫だよ”と声高らかに宣言してくれました。相変わらずあの場所には近づかないが、元気になってくれたことが何よりでした。
それにしても、性懲りもない人間が溢れている社会にありながら、たった一回の学習で、全てを習得してしまうムサシはやはり只者ではないと改めて思った。私がムサシをそう褒め称えると、周りの人は決まってこういいます。「犬は人間の3歳程度の知恵がある」と、しかし、私に言わせれば、「人間が犬の3歳ぐらい知恵がある」というのが本当です。