無鑑査シリーズで有名な一ノ蔵
4社が合同して設立された一ノ蔵。この一ノ蔵を一躍有名にしたのは77年に発売した「無鑑査」シリーズでしょう。それまでは、いい酒でも審査に出品しなければ、二級酒でしかなかったが、この「級別制度」に反旗を翻して地酒ブームに火をつけ、廃止の契機となったのがこのシリーズです。
さらに、92年には今後の新商品開発は純米酒に限ることを宣言し、伝統的な手づくりに拘る一方で、醸造発酵技術を駆使した低アルコール酒「あ、不思議なお酒」や発泡清酒「すず音」などを開発した。主役の門脇豊彦杜氏は自他共に認める生え抜きの蔵人で、現在は、宮城県内限定品の特別純米酒「大和伝」をひっさげた年間約2万石(3,400 kl)を醸す県内大メーカーに成長している。
手作りの意味について、杜氏の門脇さんは次のように言っています。「労働力は機械でもいいんですよ。手作りというのは全ての工程に関して人間の五感で判断して、コントロールすることだと思うんです。機械は、成分分析はできますが時間がかかる。一番大事なことは、今、この瞬間にどうすべきか、という素早い判断が求められる。だから経験に裏づけられた職人の感覚というのが大事なんです」。