全国銘柄に成長した佐浦の「浦霞禅」
純米吟醸酒「浦霞禅(ぜん)」は、全国的に有名な浦霞ブランドの看板商品である。これは、三倍増醸酒が主流であった昭和48年に高品質の酒として発売されたものである。佐浦での酒造暦60年という南部杜氏の平野重一氏によれば、「先代社長は見通しが利いたのかなあ?品評会や鑑評会用にしか造っていなかった吟醸タイプの酒を損得関係なく一般にも飲んでもらいたいということで売り出したんです」と振り返る。
それまでは、出荷数量1000石(180kl)程度の小メーカーでしたが、経営は厳しいながら小規模だったからこそできる「量より質」の酒造りが続けられた。その地道な努力が実り、その後の地酒ブームで一躍脚光を浴びるようになった。現在では宮城県を代表する蔵元に成長し、本社蔵と東松島市にある蔵で、年間役13,000石(2,340 kl)を醸す。
佐浦の創業は江戸時代の享保9年(1724年)、かつては仙台藩主伊達家が保護した奥州一之宮・塩竈神社の神酒酒屋として酒を醸した。その佐浦が目指す酒は、「香り高く淡麗であるが、まろやかな味わいの酒」、「春のようなほのぼのとした酔い心地の酒」だそうです。磨いた酒米を自家酵母と合わせ、低温で長期発酵させている。現代の名工にも選ばれている平野重一氏(77歳)の酒造りはまだまだ続きそうですね。