凛菜・上の家
築121年になるという風格のある古民家が、杉と竹の林を背に建っています。黒光りのする板の間、広い座敷、太い梁、囲炉裏、白い障子の向こうにはさわやかな緑が広がっています。瓦葺の屋根もまた美しく、まさに凛とした佇まいは、日本の夏を演出するにふさわしい涼を感じさせるどっしりとした趣があります。
「何てことないものばかりなんです」と、おかみさんの奥野幸子さんは言いますが、朝に畑で収穫したばかりのキュウリとミョウガの甘酢和えは、香り、甘み、噛みごたえがひとしおしみるようで、それだけでも爽やかな逸品です。丸大豆だけで作った豆腐の冷奴、鮎のみそ田楽をはじめ、手作りの心づくしの旬が並びます。
それらが、大根菜を塩揉みして刻んで散らしたご飯によく合います。「みなさん、ほんとうに残さないで食べてくれるのでうれしい」とおかみさんの笑顔。その朝に収穫された野菜を見て、その日の献立を決めるという。キュウリや茄子が見事に育ったころ、「もてなしご膳」は最盛期を迎えるということなので、楽しみにしているそうです。