それからというもの
散歩ができることがわかったことで舞い上がってしまったのでしょうか、たった一つ残っていた気がかりな事が解消したものですから、まるで犬博士にでもなったような気分で、次々に彼の特性を分析し、博識ぶりを披瀝した覚えがありますが、当のムサシは、日に日にわが家の住人としての、風格のようなものが感じられるようにまでなっていました。
私の記憶では、その年は結構雪が多く、本来は散歩を控えるべきだったのかも知れませんが、何しろ彼が積極的だったので、私も二つ返事で応じるというパターンで、何とか冬場を乗り切ることができた。今にして思えば、この自信が私の親ばかを確定的なものにしたような気がします。もちろん、今はそれを誇りにさえ思っています。
見る見るうちにムサシは体が大きくなり、全身クロビカリする立派な成犬に育ち、二人のコンビ(正確には一人と一匹ですが)は益々好調で、朝、昼、晩と散歩にでかけることが日課になっていました。散歩の途中で出会う相当犬好きと思われる人からも、“毎日、3回も散歩するのですか”と驚かれましたが、そうですと胸を張って答えました。