市中見回り開始
訓練所を見事主席で卒業したムサシは、散歩をするときも胸を張って堂々と行進し、たちまち人気者になりました。子供たちから、「噛まないですか」と聞かれると私は自身をもって「噛まないよ」と誇らしく答えると、ムサシの体にさわりながら可愛いといってくれます。彼にとっては多少迷惑なようでしたが、これも市民義務と心得ていたようです。
こうして正式に塩釜市民として認知されたためか、行動範囲は日増しに広くなり、隣の多賀城市にまで足を伸ばすようになり、ますます知名度を向上させることになっていったのです。それでも、中にはかつての私以上に“犬音痴”の人がいて、これは土佐犬ですか?とか、はなはだしい人は、これは熊ではないのですか?などと言われこともありました。
このようなキツイ冗談もなんのその、ムサシとの絆はどんどん深まり、冬場には私のベッドに潜り込むようになりました。彼の寝床は、私たちのベッドの横に用意してあるのですが、寒くなると「入れてくれ」と合図するのです。その道の識者に言わせると、それは行過ぎた行動だといいますが、そんなことは全く意に介しませんでした。