ホヤの深い味わい?その1
食べ物には好き嫌いがつきものですが、このホヤぐらい好き嫌いが両極端に分かれる食べ物も珍しいのではないでしょうか。かくいう私も、子供のころは大嫌いで、傍で食べている人を見るだけで寒気がするほどでした。しかし、それは本当の味を知らなかったというだけのことで、あの深い味わいはめったにあるものではありません。
“ホヤの味を知らないやつはアホヤ”といった人がいるかどうかは知りませんが、とにかく獲れたての味はまさしく珍味です。リアス式海岸が連なる南三陸では、海のパイナップルといわれるホヤが、ブドウの房のようにびっしりと連なり、次々と小船に引き上げられる風景がよく見かけられますが、ここまで育つには3?4年かかるそうです。
甘みが強くて身はきれいな山吹色。「毎日食べているけど、飽きが来ないよ」と地元の人はいいます。体調15cm余り、丸々と太った4年ものを、殻をむいてすぐに味わう。甘く、ほのかに苦く、磯の香りが濃い。舌先にピリッと来るえぐみの後に、爽やかさが鼻を抜ける。確かに、大フアンになるには少し時間がかかりそうだが、海のパイナップルの名に恥じない重層な味です。