ヒトも動物も尊厳は同じ
ムサシを訓練所に入れたのは、人間社会で共存するためのルールを身につけさせるという狙いがあったからである。訓練所を卒業して家に戻ったころは、確かに命令には従順に従い、飼い主としては、親分にでもなったような気分になったりもした。例えば、「ツケ」「伏せ」などの掛け声には、見事にしたがったからである。
しかし、それは間違いであったと反省している。命令に従うのは彼がよく訓練されていて、そのルールを守ろうとする素直さの現れであることは解かるが、これは人間が一方的に彼の素直さを利用しているだけで、本当に可愛がるということではないように思えてならない。つまり、動物の尊厳を本当に認めた接し方ではないと思ったのです。
もしも、ムサシの言葉を理解し、完全にコミュニケーションが取れれば、こんな命令など全く必要がないはずだと考えたのです。そこで、どのようにしてムサシとコミュニケーションを取ればよいのかを研究してみることにしました。その結果は至ってシンプルで、「声:音」「動作」「目」という3つの信号の組み合わせで会話ができることでした。