ムサシにとってもう一つの苦手なこと?その2
狂犬病の予防注射が嫌いなわけを改めてムサシに聞いてみたところ、彼の答えはこうでした。「確かに狂犬病の予防注射は好きではない。しかし、本当に許せないのは、ボクをだまし討ちするオヤジ達の態度なのだ。正直に打ち明けてくれれば、多少不本意であるとしても協力しないわけではない」というのである。
そういえば、散歩に出かける振りをして予防注射の会場に引きずり込んでいた。そんな魂胆はとっくの昔にお見通しだったというわけである。今後はちゃんと正直に訳を話して、浮世の義理を果たしてもらうことにしたのだが、来年まではしばらく間があるので、多少お茶を濁していたようなところもあったのであろう。
実はそのこともムサシは見抜いていたのである。あっという間に1年が過ぎまた予防注射の時期がやってきました。多少憂鬱な気分になっていたことは事実ですが、去年の約束を思い出したので、恐る恐る注射の話を切り出したのですが、“正直にいってくれれば付き合うといったでしょう”とあっさり切り返されてしまいました。