ムサシの顔写真を見つめていると
私の机の上には、ムサシの顔写真が置かれています。撮影したのは平成20年の4月上旬だったと記憶しています。晩年の顔だけに眉も顎も真っ白ですが目には力が感じられます。散歩で裏の公園を訪れると、芝生に座り込み遠くをじっと見つめながらしばらく物思いにふけるようなことがよくありました。この写真もそんな時のワンカットだったのでしょう。
振り返ってみると、幼い時からこうしたポーズを見る機会が多かったのですが、年輪を重ねるごとにその意味が少しずつ変わってきたような気がします。晩年の表情は、明らかに自分が長年暮らした町の景色を脳裏に焼き付けておこうという意図があったように思われます。そう感じたときは、私もじっくり付き合うことにしたものです。
それでも、時間がもったいないなどとは決して感じなかったのは、不思議と言えば不思議なのですが、敢えてその理由を探す必要もないので余裕があったのだと思うことにしていますが、そうすると今の自分が情けなく感じてしまいます。一貫した生き方を貫くことの難しさを改めて教えられたような気がしています。