北上川のヨシ原
東北一の大河である北上川。その河口から上流に向かう約10?の両岸に、ヨシ原の美しい景色が広がっている。ヨシは温帯から熱帯にかけて分布するイネ科の植物です。「北上川のヨシは汽水域に育つ稀なもので、繊維が締まり、屋根材として特に丈夫なんです。」と話すのは、石巻市北上町で屋根の葺き替え工事業を営む(有)熊谷産業の会長、熊谷貞好さん。
同社は、ヨシの刈り取りから屋根の葺き替え工事まで行う全国でも数少ない企業の一つです。古民家はもちろん各地の文化財の屋根も手がけます。ヨシは毎年12月から翌年の3月にかけて刈り取られ、4月の火入れ(野焼き)を経て枯れ草は燻炭となり、新たに芽吹きます。人手が加わることでヨシ原の環境が守られるのだという。
ヨシは空芯であるため、風に吹かれると、カラカラという独特の葉ずれの音を響かせる。「北上川のヨシ原は、残したい"日本の音風百選"の一つに選ばれています。刈り取りの時、ヨシ原でこの音に包まれると、ああ冬だなって思いますね」と熊谷さん。枯れ葉の黄金色、そして、光と音の風景が訪れる者の心を癒します。何度見ても、聞いてもいい風景です。