雄勝石ギャラリー
リアス式海岸を望む石巻市雄勝町は、古くから粘板岩玄昌石の産地として知られています。その石肌は黒色で緻密、鉈などで叩くと薄板状に割れるのが特徴です。特産品である硯は全国シェアの90%を誇っていますが、そのほかにも、屋根材や外壁材として使われる天然スレートは雄勝だけで産出され、東京駅の丸の内側の屋根には、雄勝石が使われています。
その雄勝石に、元グラフィックデザイナーの斎藤玄昌實さんが、新たな息吹を感じさせる魅力を引き出しています。絵を描くカンバスとして雄勝石を選んだというのです。「石の表に見える風景を浮かび上がらせるんです。そこには風や水の流れも隠れている」。金や銀の塗料をエアガンで吹き飛ばす独特の手法から、険峻な山並みや波うららかな海辺の景色が岩肌に描きだされます。大自然の石肌を活かした珍しい石絵独特の魅力でしょう。
「2憶5000万年の眠りから覚めた石は『私を見て』と言っている女性のよう。額に入れると実に堂々としています」。作品群は石巻市雄勝町の「雄勝石ギャラリー」でみることができる。雄勝石をふんだんに使った建物もまた見応え十分です。石の表に浮かぶ二つとない風景が、今新しいアートの素材として脚光を浴びています。