ムサシのあごに白いものが
わたしたちにとっては、ムサシが側にいてくれること以外には大きな望みはなかった。それだけにムサシの健康にはことのほか気をつかったが、所詮はいけとし生きるもの、お互永遠に時間を繋ぎとめておくことはできない。元気なムサシを前にしているのに、そんな取り止めのない不安が脳裏をよぎることがよくある。
考えてみると、よくあるというよりはしょっちゅうそのことが頭から離れないというのが本音である。あまりに切ないのでムサシにこの悩みを打ち明けてみたところ、思いは同じだが、わたしとは違ってそんなに湿っぽいものではなかった。さすがは大人と感心させられるいつもながらのコメントが返ってきたのである。
本来とても退屈で長いはずの一日なのだが、オヤジ達と一緒に過ごすことで、人間のペースに合わせられるようになったため、日々の生活にメリハリができたというのである。そう言われてみれば、わたしにも同じことが言えることに気づかされた。つまり、お互いの時間感覚が両サイドから近づいて、ほぼ中間点で均衡していたようなのである。