あまり張り切らないのがムサシ流のやり方
トレーニングのつもりで家を出たわたしですが、主役のムサシは一向に張り切っている様子はなく、いつも通り飄々とした感じです。例の階段に差し掛かっても、全く普段と変わりません。少し拍子抜けした気持ちでムサシの顔を覗き込んでみたのですが、やはり、わたしを裏切ったといううしろめたさなど微塵も感じられませんでした。
納得がいかないまま帰宅したわたしは、そのことを家内にぶっつけました。するとムサシが低い声でいいました。「オヤジもボクもそう若くはないので、あまり張り切らない方が長く続けられると思ったのだ。できるだけ長く一緒にいたいから!」。あまりの説得力に返す言葉が見つからず、二人は黙って顔を見合わせているだけでした。
気を取り直して、それならそう言ってくれればいいのにというと、「人は出鼻をくじかれると素直になれなくなる。オヤジは特にそうだから、思いっきり無視したのだ」というのです。二度びっくりしているわたしを見ながら、ニヤニヤしている家内を見て、今度はその態度に腹が立ってきましたが、これ以上恥をかきたくなかったので笑ってごまかしました。