何時もムサシと一緒
もちろん負け惜しみであることは承知しているのですが、今では片時も離れず一緒にいられるので、以前に比べとても気が楽になったことがあります。それは、家族で食事に出かけるときのあの心苦しさから、ほんの少し開放されたような気がするからです。そのころの思い出で一番悲しかったことといえば、ムサシと一緒に出かけられなかったことです。
ムサシにしてみれば、一緒に出かけることができないのは、仕事の時だけと思っているのに、何故ボクだけを置いてゆくのか不思議だったに違いありません。それでもムサシは一言も恨み言などいわず、ひたすら私たちの帰りを待ち続け、帰ってくると機嫌よく出迎え、もらったお土産を美味しそうに食べて一切水に流してくれるのです。
人間だったらいじけてしまっても不思議はないのに、どうしてあんなに寛大になれるのだろうと考えると、世の中の仕組みもちゃんと理解していたに違いないと思うのです。そうでもなければ、自分だけを置き去りにする私たちを許せるはずがありません。今にして思えば、その辺の事情を最初に打ち明けるべきだったのでしょう。