忘れられない日々
足腰がだいぶ弱ってきたムサシは、これまでのようには体が動かないことにあせりを感じているかと思えば、決してそんな素振りを見せないで、残された機能を何とか活用する工夫をしているのが伝わってきます。自分が今できることは、できるだけ自分の力でやりとおすという信念のようなものさえ感じられ、その意志の強さには感服します。
用を足すために外へでるときも、力を振り絞って私の手をできるだけ煩わさないように気を配っています。そんな時、頑張らなくてもいいんだよ!と声をかけてやると、ありがとうと笑顔で応えてくれます。なんという自立心の強さなのだろう。自分が彼の立場だったらこんなふうに振舞えるかどうかとても自信がありません。
散歩の時も休憩しながらですが、できるだけ自力で歩き健在ぶりをアピールしようとします。彼のために何もしてやれない自分が情けなくて、落ち込んでいると却って私を慰めるように穏やかな顔で私を覗き込みます。この相棒は一体どこまで大人なんだろうと、いまさらのごとく感心させられ、とても胸が熱くなります。