幽玄の世界へ誘う登米の薪能
江戸時代に仙台藩で演じられていた金春大蔵流(後の大蔵流)の能が、現在も登米市で継承されています。これは登米伊達家の流れを汲むもので、山間の閑静な場所に造られた森舞台で、かがり火の中幻想的な舞台が繰り広げられます。森と舞台と観客席が一体となった見事な空間が幽玄の世界に誘ってくれます。
舞台の設計は建築家の隅研吾氏によるもので、正面奥鏡坂の老松と若竹は、日本を代表する若手日本画家である千住博の作です。舞台下の音響装置は京都西本願寺の北能舞台を参考にしたものだといいます。この森舞台は日本建築学会作品部門に入賞した登米市の新しい文化遺産でもあります。
舞台と相対する客席が竹林、楓など美しい緑で囲まれており、ゆったりとした空間で繰り広げられる能の舞が一層際立って見えます。毎年9月に上演されるこの薪能は、忍び寄る秋の気配を肌で感じながら、薪のほどよい暖かさも同時に感じられる贅沢な時間を提供してくれます。チケットの予約はお早めにとの地元からのメッセージです。