体調を崩したムサシ
十一歳の誕生日を過ぎたある日、夜になって突然元気がなくなり、大好物のリンゴも食べなくなってしまった。夕方の散歩のときはいつものように楽しそうだったのに、どうしたことかと心配になって、かかりつけの病院に電話してみたのだが、その日は木曜日であいにく休みだった。仕方なく彼の様子を見守ることにした。
夜が更けるにつけ、だいぶ落ち着いてきたということで、私は明日の仕事にそなえ二階の寝室で寝ることにしてムサシから一旦離れた。1時間ほどたったであろうか、下からのムサシの声に目を覚ますと、階段の下でわたしを呼んでいるのです。慌ててそれまでの経緯を聞いてみると、わたしが寝室に引き上げて間もなく、むっくり起き上がったという。
そして、さっきまで手をつけていなかった夕食をペロリとたいらげ、もちろん大好物のリンゴはお変わりを要求したとのことであった。それで元気を取り戻し、自分もいつものようにわたしのベッドのところに行きたいということになったようだ。少し心配だったので、二人で抱きかかえるようにして寝室に連れて行った。