やっぱり奥さんが一番
去年の暮れから今年の正月にかけて、また新しい感動をいくつも体験しました。親孝行な息子さんや娘さん、遠いふるさとに郷愁を感じながら心ならずもご無沙汰を続けている人など想いは様々ですが、どなたの心も温かく日本人の心を感じるドラマを見るようで、とても楽しみな季節です。そんな中で一風変わったお父さんが来店されました。
その日はちょうど寒さも少し和らぎ、春は名のみといえども、かすかに春の足音が感じられる穏やかな日でした。そこに長年お父さんを勤めてきたとおぼしき一人の男性がひょっこり来店されました。そのお父さん、開口一番、何も買わないのですがみせていただけますかというのです。今日はお店も暇なのでお茶でもどうぞと勧めました。
そのお父さん、奥さんの呪縛から逃れて脱走してきたらしく、たまには一人でのんびりしたいということらしいのです。しかし、一人を楽しみたいという割には、何回も奥さんの話が出てくるところを見ると、これは若しかして落語の「饅頭怖い」のようなものではないかと感じました。早い話が、奥さんの所に帰りたかったというわけです。