精進茶懐石 雪月花 利休庵
雄大な蔵王連峰の麓に位置する遠刈田温泉郷。「利休庵」は、その一画の静かな別荘地にある。いただけるのは、精進料理を懐石料理のように供するコースメニュー。料理人は、平成29年度に「現代の名工」として表彰された佐藤伸信さんだ。佐藤さんは、京都嵯嵯嵐山天龍寺で、道元禅師の「三心」の体得に励んだ経験がある。三心とは「喜心(喜んで調理場に立つ)」「老心(お客様のことを考える)」「大心(中庸・平等)」。
「大心が一番難しいですね」と話す。献立作りは、添える歌を選ぶことから始まる。万葉集や古今和歌集などから季節の歌を選出。歳時記に従って、季節感をより豊かに表現する。味については素材の"持ち味"を表現することに尽きるという。さらに、その味が「一瞬にして"消える"」よう整えているとも。おもてなしは、待合(寄り付き)での汲み出しの冷し梅湯から始まる。
次に席に移動して、向付、汁椀、飯椀、煮物椀、焼物、強肴、預鉢、箸洗い、八寸、香の物、湯斗と続く。それぞれの食材が、喜びながら自らの役割を粛々と果たしているように感じられ、心が安らぐ。その次は庵主の佐浦公美さんによるティーセレモニー。佐浦さんは、お茶の作法はもちろん、希望すれば食事の作法についても教えてくれるので、慣れない人も安心だ。蔵王山麓の豊かで清らかな自然を眺め、美味を堪能しながら、親しい人々と和やかに過ごしたい。