季節感のない季節
5月6日頃が二十四節季でいうと「立夏」に当たります。暦の上ではこの日から立秋の前日までが夏ということになります。このころはゴールデンウィークの時期で国中がレジャーモードになる季節ですが、今年はコロナの影響で全く盛り上がりませんでした。でも、旧暦では6月に当たっていたため、梅雨入り前に豊作を願う祭りが行われ、今でも全国各地で田植え神事が行われています。田植えの神様は男性なので、女性が主役の祭りが多いという特徴があるとか。6月21日には「夏至」を迎え、この日を過ぎると本格的な夏が到来することになり、一年で一番昼が長い日になり、冬至の日と比べると、北海道の根室で約6時間半、東京では約4時間40分も長くなるということです。このころ行われる祭り(夏至祭り)は、太陽の生命力を得る祭りで、北欧など世界各地で行われます。日本で有名なのは、三重県の二見浦祭りです。ここでは、夏至の時期だけ大小仲良く並んだ夫婦岩の間から朝日が昇ります。でも、この時期は梅雨の真っただ中であるためか、あまり日が長く感じられないことが多いのですが、近年は空梅雨と呼ばれる天候も多く、今年も結構、日が長くなったと実感できました。
夏至から数えて11日目のこの時期を、「半夏」という薬草が生えることがから「半夏生」といい、田植えの目安とされています。また、関西地方ではタコの足のように大地にしっかりと根を張るようにという願いを込めて、タコを食べ、近畿地方では収穫した小麦で「半夏餅」を作って田の神に供えるという風習があります。この間、72候では、蛙始鳴(かわずはじめてなく)5月5日頃、蚯蚓出(みみずいずる)5月10日頃、竹笋生(たけのこしょうず)5月15日頃(以上、二十四節気「立夏」)。蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)5月21日頃、紅花栄(べにばなさかう)5月26日頃、麦秋至(むぎのときいたる)5月31日頃(以上、二十四節気「小満(しょうまん)」)。蟷螂生(かまきりしょうず)6月5日頃、腐草為螢(くされたるくさほたるとなる)6月10日頃、梅子黄(うめのみきばむ6月15日頃(以上、二十四節気「芒種(ぼうしゅ)」)。乃東枯(なつかれくさかるる)6月21日頃、菖蒲華(あやめはなさく)6月26日頃、前述の半夏生(はんげしょうず)7月1日頃(以上、二十四節気「夏至(げし)」)。
そして、温風至(あつかぜいたる)7月7日頃、蓮始開(はすはじめてひらく)7月12日頃、鷹乃学習(たかすなわちがくしゅうす)7月17日頃(以上、二十四節気「小暑(しょうしょ)」。桐始結花(きりはじめてはなをむすぶ)7月23日頃、土潤溽暑(つちうるおうてむしあつし)7月28日頃、大雨時行(たいうときどきふる)8月2日頃(以上、二十四節気「大暑(たいしょ)」)と続く。実によく考えられた表現で、先人の感性の深さに驚かされる。現在にも十分通じる季節感ではあるが、残念なことに近年になって急速に自然環境が変化したためか、あまりピンとこない若い人も多いのではないでしょうか。せめて、「暑中見舞い」や「残暑見舞い」などには使いたいものですが、場合によっては余りにもかけ離れた感じがして、いかにも白々しい気持ちになるというのは、わが家のオヤジだけではないような気がします。確かに時代に即さない朽ち果てた表現もあるにはあります。しかし、適切な使い方を知ることは、若い世代の人たちにとっても、母国の歴史を紐解く機会にもなるに違いありません。そんなわけで、わが家では積極的に古式ゆかしい言葉を使っていきたいといっています。ボクも、短い熟語の中に凝縮された言葉は嫌いではありません。