小国街道 鳴子温泉から中山平温泉~最上町
小国街道は、奥州街道の吉岡宿から分かれ、中新田、岩出山、鳴子を経て山形県の最上境田、羽州街道の船形に至る街道である。ほぼ現在の国道457号と国道47号に沿っている。往時は、酒田から最上川の舟運を利用して船形に陸揚げされた物資が小国街道を通って仙台方面で運ばれた。山形からは身欠き鰊や塩鱈、仙台からは鮪、明礬などの産品が主だった。古道の趣がよく味わえるのが、鳴子温泉から中山平温泉に至る道だ。この筋道は、俳聖・松尾芭蕉が通った場所である。日本こけし館近く、国道47号の崖下にあるのが尿前の関だ。戦国時代から陸奥と出羽を結ぶ峠越えの要衝として、岩出山伊達家の「尿前御関所役」が国境を守っていた。芭蕉と曽良は、手形の不備のため関所の役人に怪しまれて中々通行を許可してもらえず「おくのほそ道」に「関守にあやしまめられ漸として関を越す」と記している。
尿前の関から尿前坂を登ると国道47号に出る。国道を横切って薬師坂をさらに登り、再び鳴子狭近くの国道に合流する。小深沢に下りると、趣ある古道の風情で上り下りが続く。芭蕉と曽良が通った頃は、険しい沢の一つでつづら折りの道の難所だった。大深沢は軍事的要塞として橋をかけなかったため、深い谷底へ降りて沢を超え、また昇るという街道最大の難所だった。現在は、沢の坂に橋がかけられ、階段が整備されている場所もあり、比較的歩きやすくなっている。JR陸羽東線中山平駅付近の国道を通って中山宿跡から北へ道を折れる。義経伝説のある山神社から続く杉木立を通り過ぎると開けた農道が現れ、軽井沢を越えるとまた森の中に入る。緩やかな起伏を辿っていく道だ。道沿いに庚申碑や甘酒地蔵などがある。そして山形県の最上町に入る。
最上町は、以前は小国という地名で山形県内随一の馬の産地だった。県境を越えてほどなく、茅葺寄棟造りの民家、封人の家に辿り着く。村の庄屋だった旧有路家の住宅だったといわれ、封人(国境の守役)として、村役場や旅宿も兼ねていた。松尾芭蕉は、尾花沢に向かう途中、大雨のため三日間封人の家に逗留したという。街道を歩いたら、疲れをとるにはやはり温泉。鳴子温泉は宿も共同浴場も充実していて温泉街散策も楽しい。また鳴子はこけしの街でもあり、こけし店で伝統こけしや創作こけしを買うのも、絵付けなど製作体験をするのも面白い。中山平温泉は鄙びた雰囲気で静かに過ごせる環境だ。山形県側では封人の家近くにJR陸羽東線境田駅があり、駅前の地が日本海と太平洋の分水嶺となっている。小川のところに石碑が設置され、休憩スペースもある。境田駅から一つ隣が赤倉温泉駅。少し南に下ると小国川沿いに温泉街が広がり、ゆっくりと休養をとりたい場所だ。