すき焼き 割烹 かとう
一口頬張れば幸せな気分になるすき焼きは、一家族団らんに華を添える特別な料理だ。戦前から続く精肉店「かとう」がすき焼きを出す店を始めたのは昭和30年。以来、すき焼きの名店として秘伝のたれと味を守り続けている。すき焼きに使う肉はリブロース、ヒレ、サーロインとそれぞれ違う味わいをもつ部位を選ぶことができ、牛肉以外の具材にはゴボウや白菜、せりといった食材が並ぶ。「当店では、一カ月以上熟成して食べ頃になった仙台牛を提供しています。和牛は、鶏や豚と違って水分が少ないせいか、熟成させることによって独特の旨味成分が出ます」と話すのは女将さんの加藤英子さん。
黒毛和牛が柔らかいのはもはや常識。熟成された肉は、得も言われぬ旨みが出るのだという。仙台牛は、同じ一頭といえども部位によって味の出方が違う。リブロースは数ある部位の中でもコクがあり、熱を加えることで上等な脂と肉の旨味がいっぱいに広がる。牛肉の旨味は上質な脂で決まるのだ。肉は後入れ、先出しを基本とするかとう流のすき焼き。水や出汁を加えていない秘伝のタレは、創業以来受け継がれて来た秘伝の味だ。
肉を入れた後にたっぷり回し入れれば、仙台牛と野菜の旨味がタレとあいまって、何とも美味い。「仙台牛は、繁殖農家、肥育農家の方たちの日々の努力と研究によって作られる銘柄牛。私たち提供店の仕事は、生産者の皆さんが3年以上という月日をかけて大切に育ててこられた肉を有難く販売させていただき、お客様に美味しく召し上がっていただくことです」。慣れた手つきで鍋を仕立てる女将さんの笑顔から、仙台牛への揺るぎない信頼がうかがえた。