二・八そば処 蕉風
六丁の目を走る産業道路から北へ折れて住宅街に入っていくと、玄関に白い暖簾がかかる蕉風がある。客席は凝った細工の欄間と節のある丸太の床柱が和風の住宅のよさを表す続きの間の座敷だ。床脇の襖には、柴田町在住の水彩画家・保科毅さんが描いた農村風景の水墨画。どこか懐かしく、くつろげる空間になっている。毎朝そばを打つのは店主の中澤正明さん。北海道産と山形産の玄そばをブレンドして石臼で粗挽きし、香り、喉越しのいい二八そばに仕上げる。
黒いホシが見える細麺はコシがあって栄養価も高い。つゆとともに、するすると入っていく。「天ざるそば」の天ぷらは、エビや野菜の素材を引きたてる揚げ方がいい。冬の季節ぜひ食べたいのが「生がきそば」。東町島市の生産者から、通常の収穫期を遅らせて大ぶりに育てた牡蠣を朝どりで毎日送ってもらう。ぷりぷりと弾力がある食感、牡蠣の出し汁から出たつゆで食べるそばは格別の美味しさだ。もう一つ、冬限定の味がねずみ大根(辛み大根)。大根おろしにして、つゆに入れたり、そばにまぶして食べる。
辛みが強いが後味に旨みがある。この大根は、長年の付き合いのもと、長野県産の生産者が蕉風のためだけにさいばいしている貴重品だ。通年で評判なのが「カレーそば」。昆布と鰹節の出し汁に、カレー粉と各種香料を合わせたオリジナルの味は、かなり辛いがおいしさも抜群だ。「そばも他の料理も材料は吟味して選んでいます。お客さんに喜ばれるので、質は落とせませんね。これからも美味しいそばを打ち続けますよ」と正明さん。妻と娘も働き者。家族が仲良く営む店で、そばの醍醐味を堪能したい。