佐藤麹味噌醤油店
仙台味噌の老舗として荒町に店を構える佐藤麹味噌醤油店。創業時は、伊達政宗の仙台開府(1603年)とともに名字帯刀を許され、「酛麹屋」として荒町で製造を始めた。味噌醤油を手掛けるようになったのは明治30年から。9代目は東京品川の伊達御噌蔵に仕込み指導に赴いたこともある。ここに冬の間だけ製造され店頭に並ぶ甘酒がある、やわらかで自然の甘みが人気だ。
「醤油も甘酒も麹が命」と工程を説明してくれるのは代々の技を受け継ぐ14代目の佐藤光政さん。麹は麹室で3日かけて発酵させる。微生物が仕事をしてくれるが、最適な発酵温度を管理するは人間の仕事だ。麹蓋と呼ばれる小さな箱に入れ、室の中で上段と下段、奥と手前を入れ替えて温度を調節し、まんべんなく発行を促す。佐藤さんは「手で触れて麹の声をきき、麹と話し合いながらつくるんです」と愛おしそうに話す。
以前はササニシキを原料に作っていたが、手に入りやすいひとめぼれに変更。納得のいく麹ができるまで、麹菌を変えては試しを繰り返し、5年の歳月を費やした。大変な苦労では?と伺ったが「つねにもっといい麹を求めて、(先祖代々)ずっとやってきたと思うんです」と静かに言った。甘酒は、麹と蒸米を湯と混ぜ合わせ、50から55度で麹化をすすめ、気候や米の状態で温度を調節しながら仕上げていく。この季節を待ちわびるファンも多い。近頃は自分で甘酒をつくるために買い求める人も増えているそうだ。