一ノ蔵
宮城の米どころ・大崎市に蔵を構える「一ノ蔵」は、手間暇かけた高品質の日本酒で知られる。同社の「あま酒」は、高精白の米麹のみを使ったすっきりきれいな甘味と旨みのある白く美しい甘酒だ。発売は2001年。「地域の発酵文化、米麹の魅力を広く伝えたい。米麹を使った昔ながらの甘酒なら、お酒を飲まない人にもその思いが届けられる」と、商品化した。今でこそ米麹でつくる甘酒が知られるが、当時、甘酒といえば、酒粕に砂糖を入れて湯で割ったものという認識が一般的。アルコール分や、独自の味が苦手という方も多かった。当時の経緯を知るマーケティング室の阿部順子さんは、「米麹でつくる甘酒は、以前から地元の祭りで蔵人が振る舞い、年配の方からは『懐かしい』ともいわれ評判でした。
商品化に当たって原材料選びから品質管理まで厳しく繊細に作り上げています。と説明する。米は地元農家がつくる環境保全米。清酒造りに使用する麹と同じ60%まで磨いている。独特のアルミパックの容器も、遮光性があり、酸素を通さないといった品質を保つための提案だ。「実は酒蔵が作る甘"酒"だけに、米麹の甘酒がノンアルコールということを丁寧に伝えていく必要もあり、当初は販売に苦戦しました」と阿部さん。トマトやゴマ、カボチャ、ユズを入れた商品も展開しながら(現在は終了)、地道に販売を続けていたところ、2011年に塩麹がブームに。
すると甘酒にも注目が集まり、2015年に本格的にブームになった。「あま酒」の売り行きも発売当初から比べると倍以上に伸びた。昨年からは増産体制を整え需要に応じている。酒蔵ならでは、そして早くから六次産業に取り組んできた一ノ蔵ならではの、地域の農業や食文化を生かし、環境にも体にもやさしい甘酒。「麹のような古くから暮らしに有用とされてきたものが見直されて、それが健康に寄与することが世界中に知られるようになりました。生産者も環境への意識を強く持ち結果として収益にも繋がる、こういうサイクルが増えるといいですね」。阿部さんは、甘酒に大きな期待を寄せる。