天井の高い家はお好きですか?
竹野内豊さん、中村優子さん扮する夫婦の掛け合いで人気の、大和ハウスのCM。「天井の高い家にしてよかったね!」という奥さんの言葉に、心ならずも無気力で「そうだな!」と応えるご主人。また、ある時は、そう応えるご主人の言葉に、奥さんが「嘘つき! 私は知っている。本当は、あなたは狭いところが大好きだということを!」と心の中でつぶやく。そして最近では、奥さんが、例のセリフ「天井が高い家でよかったね!」といじわるそうにご主人に同意を求める。するとご主人は、「でも!」と反論を試みるが、奥さんは刺すような目で「でも、なに!」と語調を強める。ここでうっかり反論などしようものなら、核のボタンを押してしまったような後悔をするに違いないと、自分を戒めて、「いや、なんでもない」と応える。このCMが人気なのは、失礼ながらダイワハウスの建物がすばらしいからではない。ご主人の口ごもり方に、身につまされる思いで、言いたいことをぐっとこらえている自分にスポットが当たっているからではないでしょうか。
わが家の場合、お母ちゃんは、もう少し緩急さまざまなボールを投げてきます。例えば、オヤジか夜に何か食べたいといおうものなら、「こんな時間ですからやめた方がいいです」といってブレーキをかける。しかしそれはあくまで、オヤジの健康を気遣っているという大義名分で、本音は、自分は食べたくないし、面倒だからです。その証拠に、自分が食べたいときには、「なんか食べたいね、 お父さんわ!」とくる。こうした時、オヤジには断る権利はあるのだが、もし断ると、お母ちゃんは、それじゃやめましょうというに決まっている。お互い食べるのをやめることに同意したのだから、丸く収まったはずですが、なんとなく気まずい空気が漂います。また、ある時は、いただき物を食べようとなった時に、ちょっと多すぎると思える量をオヤジの皿に追加する。こうした時も、オヤジには断る権利はあるのだが、お母ちゃんの意図がみえみえな場合(例えば、パッケージや箱などを早く空にして処分してしまいたい)には、オヤジにはなかなか断り切れない。
それは、オヤジは元々食いしん坊であることと、早くかたづけたいというお母ちゃんの気持ちに沿いたいという二つの理由からである。つまり、こうしたときには、オヤジの健康は二の次なのである。このような王手飛車取り的行動パターンは、誰かとそっくりなのである。その人は誰であるかは口が裂けても言えないが、その戦術は実に見事だ。例えば、ある人が、某氏が欲しがっているモノをあげましょうかと申し出る。すると某氏は、「私はそれほどほしくないが、貴方がどうしても上げたいというのなら、もらってあげてもいいよ!」とくる。そういわれても、一度言い出した以上、じゃやめます、というのでは角が立つ。そこで不本意ながら、もらってくださいということになる。こうして、もともと欲しかったものをゲットした某氏は、他の人には、「いいものが手に入った」といって自慢する。お母ちゃんにして見れば、これは立派な駆け引きであるとして、見習っているようだが、オヤジには、こうした変化球は苦手で、「そりゃあないよ!」というところでしょう。