株式会社まちづくり村田の挑戦
宮城の小京都ともいわれる村田町は、豪商たちや里山の人々が築いた独特の文化を持つ町だ。2017年4月に発足した「株式会社まちづくり村田」は、この町の潜在的魅力の発信に挑戦している。村田町は、昔から日本酒・納豆・味噌・糀の製造元があり、発酵食品が発達してきた。2018年3月20日、その「発酵文化」を発信する「糀ダイニング藍」が、蔵の町並みに誕生。発酵食品と地元の野菜や果物を組み合わせた、健やかな美味を提供している。定番の人気メニューは「糀美人」。地酒である乾坤一の酒粕が入ったカレーは、まろやかな味わいに驚く。豚汁は地元の櫻中味噌と野菜を使った、この地のソウルフード的存在。小鉢には、甘糀が使われている。ドリンクは甘糀を使用した豆乳甘酒。プルーンやいちご、ブルーベリーなどの他、季節の果物や野菜など種類も豊富。新鮮な素材ならではの、豊かな風味を満喫したい。豆乳や甘酒が苦手な人でも美味しくいただけると好評だ。
店舗は江戸末期の蔵を利用。改装は最小限にしかされていない。太い梁や柱などが醸し出す雰囲気を、ヘルシー感一杯の食事とともに味わえる。この食事処は、まちづくり村田の「空き家・空き店舗を使った起業家支援事業」のモデルでもある。上下水道の整備からビジネスモデルの構築まで、総合的にサポート。利用可能な物件は多数あるので、このエリアに新しい魅力を添える店のオーナーになってみるのもいいかもしれない。村田町には、城下町の時代もあった。村田町役場東庁舎の隣には、当時の面影を留めた武家屋敷が今も佇んでいる。この屋敷は、江戸時代後期にはすでに存在していたことが文献で確認されている。時代の変遷の中で部分的に改築して屋根や部屋の広さなどが変わったが、武士の住まいとしての風格は受け継がれている。
東日本大震災の際に被災してしばらく閉鎖されていたが、2018年10月1日に改装オープン。9時から16時の時間帯は、屋敷内の庭を自由に散策できる。庭には蔵や小さい川があり、往時の風情が漂っている。紅葉の時期は、もみじとのコントラストを楽しみたい。この武家屋敷の特徴は、宿泊ができることだ。電気や上下水道はもちろん、布団やIHキッチン、最新式の水回りが整備されている。連泊の際に便利な全自動洗濯機もある。観光のみならず、移住や定住を考えている人のお試し暮らしにもおすすめだ。また、まちの文化的活動をする場や会議室としても利用できる。株式会社まちづくり村田では、今後も様々な企画を予定している。かつての落ち着いた佇まいを残しながらも、新しい魅力を取り入れていくこと。季節ごとの景色や味わいも楽しめるので、足を運んでみてはいかがだろう。