丸森の織物
「てのひらの技」なんてほっこりした響きでしょう。心を込めてていねいに、一つひとつを作り上げていく、そんな光景が浮かびます。今も息づく丸森の伝承の手技を体験することができます。阿武隈川を懐に抱く山間の町は、雪化粧した美しい風景へ。農閑期になると、人々は稲わらを生かしたわら細工や、身近な自然の恵みを利用したつる細工、竹細工といった手仕事に精を出しました。そんな手仕事は「てのひらの技」として、丸森の名人たちによって脈々と伝えられているのです。
その中心になっているのが、丸森手仕しごと館(丸森町高齢者生産活動センター)。ここでは子供のころから親たちの仕事を見、また手伝いをしてきた人たちが、わら細工、竹細工、あけびや山ぶどうのつる細工、織物に名人の技を注いでいます。人気のつる細工のバッグ、使い心地のいい座敷ぼうき、美しい竹ざる等々、伝統の美とともに温かみをかもしだす品々。それらを見て、触れて、買い求めることができるのが同館です。
今の季節、多くの人が求めてやってくる「しめかざり」も、真夏のすげ刈りに始まり、地元寺院でお祓いを受けた御幣の飾り付けまで、ひと作業ひと作業ていねいに作られたものです。この他にも機織りを使ったさき織りや、名人に教わりながら作るわら細工など、実際に体験できるのも、嬉しいところ。もう一つ、丸森の手仕事で忘れていけないのが「丸森和紙」。県内でも希少となった手作りの和紙は、障子紙や便せん、はがきなどとして使われ、張りがありふくよかな手触りが特徴です。温もりの丸森へ、「てのひらの技」へ会いにお出かけしてみませんか。