大黒(DAIKOKU)
蕎麦粉は生き物です。毎日水の量を変え、こねるスピードを変え、粉の状態にあった打ち方をして初めて、同じ美味しさをご提供できるんです」そう語るのは、「大黒」で蕎麦打ち職人を務める矢島克彦さん。山形県鶴岡市出身、幼いころから父親の打つ蕎麦を食べて育ってきたという、生粋の蕎麦好きだ。矢島さんは、新蕎麦は生産者からの「挑戦状」だと言う。「今年の蕎麦はどうだ、いつもと違うだろう、おまえならどう打つのかって。非常にワクワクします」と顔をほころばせた。「大黒」で味わえる蕎麦は、100%山形県の契約農家で栽培された蕎麦のみを使用。
蕎麦の味が一番引き立つという独自の粗さを指定し、栽培農家の熟練した職人が自家製粉する。挽きたての蕎麦粉は、湿度や温度に気をつけながら即座に店へと運ばれる。挽きたて、打ち立て、茹でたてだからこそ芳醇な香りと生きた蕎麦の味が楽しめるのだろう。「当店は二八蕎麦と十割蕎麦の両方を提供していますが、二八はしっかりとした歯ごたえとのど越しがいいのが特徴。そして十割は、生産者のこだわりが詰まった本物の蕎麦と水のみで打つ、生蕎麦の純粋な味わいが自慢です。始めて当店にいらっしゃった方には、「板蕎麦を食べてみてほしいですね」と矢島さん。
はじめは蕎麦だけを、次につゆをつけて、今度は摺りたての山葵を蕎麦にのせて、あとは薬味をお好みで...と、蕎麦の楽しみ方はいろいろ。「大黒」は山葵もまた山形の湧き水が育てた本山葵を使用。香り高いがつんと鼻に抜ける感じがなく、まろやかな味わいだ。最後に蕎麦の旨味がたっぷりと溶け込んだ蕎麦湯を飲めば、身も心も満たされる極上の時間になるに違いない。そして、今では定番になった裏メニューの「鴨ねぎのしゃぶ鍋」だ。鴨肉の芳醇な香り、鶏つくねが醸し出す甘み、大皿一杯の白髪葱のコンビネーションがくせになる逸品だ。〆には十割蕎麦で"つけ蕎麦"まで楽しめる「大黒」らしいこの粋なメニュー、家族や大切な仲間との忘年会・新年会にいかがだろうか。