名取の溝口家住宅
名取市の溝口家住宅は240年から250年前の宝暦年間(1700年代中期)に建てられた農家建築で、国の重要文化財に指定されています。茅葺の寄棟造(四面で構成された屋根)で、桁行(横方向)12間、梁間(縦方向)6間の堂々たる住宅です。また、敷地には表門やうまや、米蔵、みそ蔵、座敷蔵の3棟も立ち並ぶ、旧仙台藩領の中では最大級の古民家といわれ、周囲には堀といぐねがあります。
家の半分は広い土間で、地元で嫁かくし柱と呼ばれるかまど脇の柱などが、用材の曲りそのままに多角的に仕上げて使われています。圧巻は土間の梁、曲り木をそのまま複雑に組あげているところが見事です。この溝口家住宅も東日本大震災で被災し、かなりの損傷を被りましたが、母屋と表門、うまやは2012年10月に国費で修復を終えました。しかし、3棟の蔵は重要文化財に指定外だったため、修復工事には着手できず、一時は解体もやむなしという状態でした。
しかし、保存が必要と判断した文化庁が12年7月に3棟を追加指定し、3年がかりで修復工事が進められ、今月18日に一般公開される運びとなりました。米蔵は木造1階、みそ蔵と座敷蔵は木造2階で、農家の伝統的な屋敷構えを色濃く留めています。食料や自給自足の暮らしに欠かせない生活道具などの保管場所になってきました。この屋敷で生まれ育った溝口とも子さんは「幼いころ、『悪いことをするとみそ蔵に入れるぞ』と叱られたものです」と懐かしむ。