柿の木の気持ち
わが家の玄関の前には、立派な柿の木があります。冬の間は枝だけになって少し寒そうにも見えます。それでも春になると芽が出て夏を迎えるころには、青々とした立派な葉をつけ身を育てる準備に取り掛かっているようです。丁度そのころになると日差しも強くなり、大きくのびた枝と葉が風に揺られて、そよ風をおこす天然のクーラーになり、ムサシの昼寝の手伝いをするようになります。
そうなんです。この柿の木は毎年夏の暑さからわが家の家族を守ってくれる貴重な存在なのです。ところが、実をつけ始める秋口になると、葉が落ちだしてそこら中に広がり、今度は"掃除をするのが大変だ"と邪魔もの扱いされるようになります。そんな私たちの姿を横目で見ながら、ムサシは落ちた柿の葉の上にどっしりと陣取り、"この柿の葉を邪魔者にするのは勝手すぎますよ"と言わんばかりの顔をします。
無粋な私は、どちらかというと邪魔だと思う方だったのですが、だんだん身勝手な自分を恥じるようになってきました。ものごとにはプラス面とマイナス面が必ずあり、これらは表裏一体のものであることをあらためて教えられたような気がします。滅多に怒ることのないムサシは、このことをよく理解していたのかもしれません。今年こそ、感謝の思いを込めて、柿の葉の囁きに耳を傾けてみたいと思います。