昨日の昼食
オヤジはいつものように午前中の仕事を終え、いざ昼飯をと思って茶の間に向かったところ、いつものところにおにぎりが置かれていないことに気がついた。今日はご飯を茶碗に盛って食べるようにということかと思い、台所に回ってみると、案の定、茶碗が置いてあるのが見えました。やはりと思いながら、ふと茶碗の底を見ると、そこには梅干が2個並んでいました。
それをみたオヤジは、「また、おにぎりを握ろうとしていた時、電話か何かがあり、忙しさにかまけているうちに、コロッと忘れてしまい、そのまま出かけてしまったのだろう」といいながら、ボクの顔を覗き込み、同意を求めるような目つきをしました。しかし、ボクはそれを否定するように、すかさず言いました。「それはお母ちゃんが忘れてしまったのではなく、毎日おにぎりを握ることの大変さを、少しはオヤジに知ってもらいたいという謎かけではないか」と。
するとオヤジは、珍しく、"そうかもしれないな"と頷いておとなしくなりました。ボクはほんの冗談のつもりで言っただけなのですが、ちょっと薬が効きすぎたようで、かわいそうな気がして、"それは冗談だよ"などと言い出せなくなってしまいました。しょぼしょぼと、茶碗にご飯を注ぎ食べ始めたオヤジの姿は妙に侘しそうで、悪いことを言ってしまったと反省しています。