亘理の「はらこ飯」
宮城県には、北上川、鳴瀬川、阿武隈川をはじめ大小の川が流れています。秋になるとサケが産卵のため遡上してきます。「はらこ飯」は、阿武隈川の河口にある亘理地方で、このサケを使って、昔から作られてきたといわれています。藩主の伊達政宗公が貞山運河工事の視察を行った際、亘理・荒浜の漁師が献上したのが始まりとも伝えられています。秋サケは、紅サケやサーモンより脂は少ないが味が濃いという特徴があります。
サケは一口大に切り、醤油、味醂、酒、昆布だしで煮立てます。これを炊き上がったご飯の上にのせ、ハラコをのせれば出来上がりです。はらこは、50から60℃のお湯につけて手早くほぐし、冷水にとって、丁寧に皮を取り除きます。お湯につけると白く変色しますが心配ありません。荒熱をとり、少し塩を振ってよく混ぜると、透明感のある鮮やかなオレンジ色に戻ります。ほぐしたハラコはサケの煮汁に30分ほど漬けておきます。
見た目も美しく食感も損なわないように、ご飯にのせるのは直前にします。今では、秋の風物詩として定着している「はらこ飯」ですが、サケが食卓に乗るまでには長い道程を旅しています。真冬に孵化した幼魚が春に海へ下り、はるか太平洋を回遊し、北の海で三年から四年かけて親になり、生まれた川に戻ってきます。このサケを守り育ててきた歴史があり、増殖と資源保護の努力が実を結んだということでしょう。