横綱の貫録
わが家のムサシは、夏の過ごし方についてよく研究していました。その結果、編出したのが玄関のタイルに横たわり体を冷やしながら昼寝をするという方法でした。わが家では、めったにエアコンをかけないようにしているためか、ムサシはあまり期待していなかったようです。というより、私たちと同じように、ムサシもエアコンや扇風機の類はあまり好きではなかったようです。
そこで、温まるのが遅い玄関タイルに目を付けたのでしょうが、バスタオルが敷いてないと横にならないという潔癖な一面もありました。それに、郵便屋さんなどが訪れると、すぐにその場を立ち去ってしまうため、安心してゆっくり休めないという不便もあったようです。そこで、扇風機を弱めにして回し、床に寝転がるよう勧めたところ、これが結構気に入ったみたいで、それ以来、私も一緒にひんやりとした床に寝るようになりました。
しかし、少し寒くなったと感じられる今のような季節になると、今度は、ソファーの上に敷いてある細長い座布団にどっかりと横なるようになりました。チョンと少し飛び上がるようにして座り込むときのしぐさは、まるで勝負の後に、横綱がどっかりと座布団に腰を下ろす姿にそっくりでした。今では、その姿こそ見られませんが、自分の居場所があるというのを実感していた証拠のように感じられ、思い出すと気持ちがなごみます。