ムサシの七不思議(その2)
少し大きい建物などには、「犬走り」という名のコンクリートで盛り上げられた場所があります。ちょうど建物の床と庭の平面の中間の高さにあるあれのことを言うのですが、子供のころに何故犬走りなどと呼ぶのか?と大工さんに聞いたことがありました。すると、そこは犬が好んで走り回るからだという明快な答えがあったと記憶しています。
わが家には、「犬走り」と呼ばれるような工作物はありませんが、強いて言えば軒下のある部分にこれに似たものが数メートルあります。ムサシは散歩の帰りに必ずここを通ることにしているようです。もちろんそのこと自体は別に問題はないのですが、その続きの植木が雑然としているため、時には蜘蛛の巣を顔につけて家に入ることもありました。
しかし、当のムサシはそんなことにはお構いなしに毎日そこを通ります。彼にとっては単なる癖なのかもしれませんが、私たちにしてみれば、できれば止めてもらいたいと願っていました。"犬走りを走らなければ犬ではない"とでもいうように最後までこのスタイルを崩しませんでした。些細なことではありますが不思議といえば不思議なことでした。