あれを一個買ってくれ!
最近のお母ちゃんは、少し働き過ぎなのか疲れが出てきたようです。それと関係あるのかどうかはわかりませんが、テレビを見ていて、「あれを一個買ってくれ!」とオヤジに向かって言いました。お母ちゃんが言う「あれ」とは、「なきささん」のことです。それは、TBS火曜日の夜10時放送の「私の家政婦なぎささん」というドラマの登場人物、「なぎささん(大森南朋さん演じる家政婦)のことです。この家政婦さんのプロフェショナルぶりは半端でなく、掃除洗濯はもちろん、料理も得意、その上どんなことでも相談に乗ってくれるというまさにスーパー家政婦です。そうです! お母ちゃんは、このなぎささんをわが家に連れてきて、家事全般をお願いしたいというのです。このとてつもないお願いを、いつものことと受け流すかと思いきや、オヤジも、それに同調して、いくらぐらいできてくれるのかなぁ~と、真顔で言うのです。まさか本気ではないだろうが、できるものならそうしたいという表情が伺えた。似た者なんとかという言葉がありますが、この頃のオヤジとお母ちゃんは、バーチャルとリアルがごっちゃになってきたような気がします。
本当のことを言うと、ボクがなぎささんの役目を果たせれば一番いいのでしょうが、そうもいかないので少しへこんでいます。でも、この話はあり得ないから面白いのです。もし、なぎささんがわが家に来てくれとしたら、お母ちゃんの仕切り方になぎささんも辟易してしまうのではないでしょうか。それから、オヤジだって同じようなものです。自分の仕事場を引っ掻き回されるのが大嫌いで、自分のエリアには誰も近づけたくないと思っているに違いありません。実は、ボクがオヤジと相棒になれたのは、こうしたオヤジの拘りに逸早く気づき、それを尊重することにしたことが大きな要因だったように思います。言ってみれば、たとえ小さくても自分の家は、城と同じですから、自分色にカスタマイズされているからこそ、居心地がいいわけで、どんなに整理整頓されていても、他人のステータスで作られたモジュールでは、きっと居心地が悪いに違いあれません。隣の芝生はきれいに見えるのは、少し遠目にみるからきれいに見えるだけで、やっぱり落ち着くのは何といっても長くなじんだわが家のスタイルです。
二人とも、それを重々承知の上で、優秀な家政婦さんを雇いたいなどと言っていてるのですからおかしいですよね。もし本気でそう思っているのであれば、まず手始めに、お掃除ロボットやワンスチップで乾燥までして切れる全自動の洗濯機を入れてみればいいと思うのですが、実は、お母ちゃんはこれには猛反対なのです。オヤジは自分が洗濯物を取り込むのが面倒なので、全自動の洗濯機の購入を度々提案しています。しかし、お母ちゃんは頑としてこれを拒否続けています。掃除はともかく、料理と洗濯だけは自分の手でやりたいと思っているようです。ボクは料理のことも洗濯のこともわかりませんが、お母ちゃんがこれにこだわる気持ちは何となくわかります。オヤジはオヤジで、仕事(家事)に費やす労力と機械を導入することによるコスト、時間の節約、便利さなど比較考量して、経済的合理性の大きさを測るというのが、物事の決め方で、何とも味気ない気もしますが、収入と支出の関係を無視することはできない以上、やむを得ないのかもしれません。でもボクは、この水と油がほどよく混じり合って、敵対的かつ協力的である関係が何故か心になじむのです。不思議ですねぇ。