作並温泉 鷹泉閣岩松旅館
岩松旅館の創業は1796年。仙台藩主伊達斉村公に岩松家だけに秘された名湯を地域の人々にも開放したいと願い出て許されたことから始まる。創業者である岩松喜惣治は山の巨木を切り倒し、岩山を割り、道をつけ、谷底に至る長い階段を作って湯壺を整備するまで8年間の歳月をかけた。藩主はその功績を讃え「鷹乃湯」の名称を授けたのである。現在、岩松旅館の玄関は「鷹湯」の扁額がかかる。
作並温泉は古く、奈良時代に僧行基が湯気の立つ泉水を発見した、鎌倉時代に源頼朝が奥羽征伐の折り、鷹の傷を癒している湯を見つけたという伝説も残る。岩松旅館の大きな魅力は料理にある。県境に近い環境から、宮城と山形の食材を豊富に使った献立が味わえる。宮城は魚介類、山形は野菜や山形牛などといった具合で、ガゼウニ、吉次の焼き物、仙台牛すきやき、山形名物の芋の子汁などが並ぶ。器と相まって美しい和食は食べるのがもったいないと思うほど。
総料理長の東海林剛さんは、四季それぞれに食材をどう組み合わせてどんな味に仕上げるか日々考えて手を賭けているという。宿泊プランにより、ダイニングでのり和食膳、部屋食、ブッフェの各食事スタイルが選べる。過ごしたい部屋は、半露天風呂付客室。ツインベットの洋室に琉球畳の12畳和室が続く広々とした部屋だ。かわら屋根の塀がプライベート感を高める半露天風呂の浴槽は、渋い色合いの信楽焼き。1人でゆったりと山の緑を見上げながら入る心地よさは格別だ。深山幽谷の趣がある地に佇む宿には、静かでゆるやかな