霊長類学者 ジェーン・クドール博士の話
【4月12日 AFP】によると、世界的に有名な英出身の霊長類学者ジェーン・グドール博士(86歳)は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)は、人類が自然を無視し、動物を軽視したことに原因があると指摘している。アフリカで先駆的な研究に取り組み、チンパンジーの本質を明らかにしたことで知られるクドール氏は、ナシヨナルジオグラフィックの新ドキュメンタリー番組「ジェーンのきぼう(Jane Goodall:The Hope)」公開に先駆けて行われた電話会見で、今後の災難を防ぐために過去の失敗から学ぶよう世界に訴え、誰もが変化を起こすことができると語った。*今のパンデミックについてどう考えますか?(記者の質問)に対して、クドール氏:われわれが自然を無視し、地球を共有すべき動物たちを軽視した結果、パンデミックが発生した。これは何年もまえから予想されてきたことだ。例えば、われわれが森を破壊すると、森にいるさまざまな種の動物が近接して生きていかざるを得なくなり、その結果、病気が動物から動物へと伝染する。そして、病気をうつされた動物が人間と密接に接触するようになり、人間に伝染する可能性が高まる。動物たちは、食用として狩られ、アフリカの市場やアジア地域、特に中国にある野生動物の食肉市場で売られる。
また、世界中にある集約農場には数十億匹の動物たちが容赦なく詰め込まれている。こうした環境で、ウイルスが種の壁を越えて動物から人間に伝染する機会が生まれる。*このような動物市場に対し、私たちはどんなことができますか?(記者の質問)に対して、中国が生きた野生動物の市場を閉鎖したのは非常に良いことだ。一時的な禁止措置だが、われわれはこれが恒久的な措置になり、他のアジア諸国も後に続いてくれたらと願っている。しかし、アフリカではブッシュミート(食用の野生動物の肉)の販売に多くの人の生活が懸かっているため、これを禁止するのは非常に難しいだろう。自分自身や家族を養うためのお金を全く持っていない人々に対して(食用野生動物販売の)禁止をどう行うべきかは、かなり慎重に検討する必要がある。ただ少なくとも今回のパンデミックはわれわれに、新たな流行を防ぐにはどんなことをすべきか教えてくれたはずだ。*私たちは希望をもって良いですか?(記者の質問)に対して、私たちは自然界の一部であり、自然界に依存しており、それを破壊するのは子供たちから奪うことにほかならないということに気付かねばならない。
世界中で行われている前例のないロックダウン(都市封鎖)という対応によって、より多くの人が目を覚まし、ひいては、どうすれば自分たちの生き方を変えられるのかということを考えるようになればと思う。日々の小さな選択をする時にその選択がもたらす結果を考えるようにすれば、誰でも、毎日、影響を与えることができる。何を食べるか、その食べ物はどこから来たのか、その食べ物は動物を虐待して得られたものか、集約農業によって作られたものか(大抵の場合そうだが)、子どもの奴隷労働で作られたから安いのか、生産工程において環境に悪影響を及ぼしたか、どこから何マイル移動してきたのか、車ではなく徒歩で移動できないか。それから、貧しいとこういった倫理的な選択ができないため、どうすれば貧困を和らげられるかも考えてほしい。貧しい人たちは生き延びるために、自分たちにできることをせざるを得ない。どれを買おうかと考える余裕はなく、最も安いものを買うだけだ。食べ物をもっと栽培できる土地を必死に探し、最後の木を切り倒してしまうのだ。私たちが生活の中でできることは、一人一人少しずつ異なるが、私たち皆が変化を起こすことができる。誰もがだ。私たちも是非励行したいものです。