秋保温泉 伝承千年の宿 佐勘
佐勘の歴史は古く、佐藤家が中世から秋保に土着して温泉を管理し、江戸時代の初期には仙台藩から湯守を任命されている。会長の佐藤潤さんは「400年前に主屋が焼失した際には、再興のため当主が高野山に往復48日かけて参り、聖火『貧女の一灯』を火縄にうつし持ち帰りました。それ以来戒めとしてその火を絶やさず、佐勘の聖なる火として守っています。1850年代の安政の大地震で温泉が枯渇した時には、出羽三山に籠って復活を祈ったとか。戦時中には東京の小学校の学童疎開を受け入れ、食べ物の確保に苦労したそうですが、50年後にその方々が卒業式を佐勘で行うと訪れてくれたことがあります。
先祖がその時々の勤めを果たし、周りの人々の協力もあったおかげと感謝しています」と話す。現代の佐勘では露天風呂付客室で過ごしたい。ツインベッドの洋室に10畳の和室もある部屋はくつろぎのスペース。空を仰ぎながら檜の浴槽に身を沈めれば疲れも取れていく。もう一つ、広い専用庭園を設えた部屋は、部屋の中と外の空間を楽しめる。庭は眺めても歩いても快適だ。「名取の御湯」はぜひ入りたい浴場。格子から差し込む陽光が心も和らげる。
週末には女性用にバラ風呂も。温泉の良さが満喫できる。楽しみの食事は調理長の富永正夫さんが腕を振るう。令和元年度「宮城の名工・日本料理調理人」の受賞者である。主に宮城県産の食材を使った、目に美しく舌に美味しい料理の数々が並ぶ。宮城県の海は魚介の宝庫、夏はウニが主役だ。また器に飾る朴葉やもみじなどは周囲の山からもれるもの。ゆっくりとその味を堪能したい。佐勘なら、悠久の歴史を感じながら満ち足りた時を過ごせる。