割烹 天ぷら 三太郎
仙台市青葉区たちまちにある一軒家割烹「三太郎」。若き女将の樫原貴子さんは「昼は、みずみずしい緑を湛えた庭をご覧いただけます。夜は、昼とはまた違った風情を感じていただけると思います」と、たおやかに話す。三太郎といえば、半円形のカウンターで揚げられている天ぷらを思い起こす方も多いのではないだろうか。夏の天種は、アワビやウニなど、三陸産のものが中心。季節を問わず、気仙沼産のフカヒレなどの希少な食材も使うとのこと。それぞれの食材は、生でも美味しくいただける。
その魅力を生かすために、レアな状態で、しかも中心部まで冷たさを残さないように揚げるのは、まさに職人技だ。野菜は、大阪の水なすや、奈良もしくは山形の丸なすなどが、この季節ならでは味わいである。天ぷら鍋は、熱伝導が良い銅製。温度を細かく調整できる。天種の衣をつけて揚げるときの音が、何とも美しい。強めに油がはねると、水琴窟を彷彿とさせるような、澄んで、響きのよい音色が奏でられる。
天ぷら油にブレンドされているごま油の香りがふんわりと漂い、至福の時間を演出する。季節感あふれる会席料理は、いつ訪れても新たな驚きと感動をもたらしてくれる。食材は、宮城県産の旬のものや、全国各地から取り寄せたものを使う。仕込みは、仕事のときにベストな美味しさになるよう、慎重に時間を見計らって行う。味はもちろん、繊細で華やかな細工も老舗の職人ならではの技だ。秋の初めには、店内の一部を茶房に改装。ティータイムには日本茶と甘味を提供し、夜はバーになるとのこと。新たな季節の楽しみとしたい。