簡単なものでいいよ!
ある調査によると、夫婦ともにフルタイムで働いている世帯は25%だそうです。こうしたいわゆる共働きの家庭でも、家事をこなすのは妻が64%で、夫は31%だという。共働きでは理想としている比率は「夫が50%、妻が50%」ということでしょう。しかし、現実は「夫が10%、妻が90%」という数値を突きつけられると、わが家のオヤジとしてもちょっと肩身が狭い気がするようです。つまり、オヤジの場合は現実の数値そのものだからです。ちょっと救いなのは、若い世代ほど家事の分担が進み、20歳代は40歳代の半分ほどなっていることでしょうか。でも、共働きの世帯は20歳代が46%、30歳代が52%、40歳代が61%と年代が上がるに連れて増加している。「夫婦ともにフルタイム」が各年代ともに25%前後で、「フルタイム以外」も年代が上がるにしたがって増加していることなどを合わせて考えると、いかに鈍感力に秀でているオヤジでも穏やかではないようです。こうした現実を知ってか知らずか、遅ればせながら洗濯物の取り込みや食器洗い程度のことは積極的に手伝う姿勢を見せるようになってきました。
こうしたデータから垣間見えることは、世の女性(妻)たちは、そうとう家事の分担について不満をもっているということなのでしょうか。そういえばボクも思い当たることがあります。それは、ときどきオヤジが口にする「簡単でいいよ!」という言葉です。それはどういうときに口にするかといえば、「夕ご飯は何にしますか?」とお母ちゃんが訪ねる時です。オヤジにしてみれば悪気はなく、調理にあまり手間暇をかけずに済むもの、という意味で言っているのでしょうが、お母ちゃんの言い分は、「料理に簡単なものなどない」と思っているからです。お母ちゃんは、現実の話ではなくても、この話が話題になると機嫌が悪くなり、「料理に簡単なものなどない」と強い口調でいいます。敢えて逆らう理由はないのですが、できれば誤解を解きたいと思うようで、ちょっと反論気味になってしまい、かえって話をこじらせてしまうことになります。でも、ボクはオヤジの言いたいこともわかります。オヤジに言わせれば、「納豆ごはん」「卵かけごはん」「お茶漬け」などは、「ステーキ」「カレーライス」「ビーフシチュー」などと比べ比較的簡単ではないということでしょう。
でも、いつものパターンですが、そこまで話が進みません。ところが、最近、オヤジがついに言ってしまったのです。「お茶漬けは簡単でしょう!」と。するとお母ちゃん。「お茶漬けは簡単ではありません」。案の定きっぱり言い返した。よせばいいのにと思ったがあとの祭。理屈を売り物にしているオヤジとしては、「難しい」という言葉があるということは、その反対の言葉がある証拠だ。簡単でも難しくもないことだけならば、どちらも必要ないはずだ! ということは料理でも、簡単なものと難しいものがあるということだ。そんなことはお母ちゃんもよくわかっているはずです。お母ちゃんが怒るのは、「簡単なものでいいよ!」という言葉を、 思いやりのある言葉として発している無神経さに対して憤っているのです。「何が思いやりだ。全くわかっていないくせに!」と言いたいわけです。それは単に食事に関することだけでなく、家事全般についてもいえることです。この調査結果から言えることは、女性は家事の負担割合自体を問題にしているのではなく、デリカシーに欠けている世の男どもにため息をついているということなのでしょうか。