石巻市の桜
青い空の広がりと光り輝く海の青。爽快な青の風景を彩るように咲くヤヱザクラとヤマザクラ。400百年以上前、慶長遣欧使節のサン・ファン・パウティスタ号が出帆した石巻の月浦も、4月ともなれば桜と海の眺望が楽しめる絶景の地となる。1993年に竣工し、東日本大震災では8mの津波に襲われながら2年後に修復された復元船のマストが、400百年前に伊達政宗が描いた壮大な夢と思いを誘う。江戸時代であれば洋上には、江戸と行き来する万石船や漁師が操る帆掛け船も往来していたことだろう。石巻の桜といえば、やはり日和山の桜は見逃せない。
ソメイヨシノやシダレザクラ、シキザクラと多彩な桜が見られ、約400本の桜の中には樹齢70年以上の桜も多いという。今年の開花は3月31日と予想されていたがかなり早まった模様。この他にも市内では国指定名勝・齋藤氏庭園の桜、石巻駅前にある本家秋田屋の日本庭園の桜など、庭園の景観と共に桜を楽しむことができる。齋藤氏庭園は、丘陵の斜面を背景に江戸時代と大正時代の9つの建物と庭が広がり、風情ある桜にうっとりとさせられる。この辺りも縄文時代の遺跡が発掘されたところだという。市内蛇田の東雲寺では樹齢300年以上といわれるシダレザクラが見られる。
「ご近所の方のアイディアで、見頃の頃、天候にもよりますがライトアップしています」と16代目ご住職の山田清鷹さんが教えてくれた。さらに桃生町まで足を延ばせば、ちょうど満開となった桃の花が桃源郷のような景色を広げる里景色を楽しんだ先に、樹齢300年という「長谷寺の山桜」が待っていてくれた。この桜も、昔から農家の人々が自然の暦としてきた種まき桜で、この辺りにはシダレザクラも咲き揃い、たわわに花芽をつけた姿はどこか実り豊かな稲穂を思わせてくれる。石巻は言わずと知れた水産の町であるとともに、水産加工業の町。お花見の帰り、新鮮な魚や豊富な水産加工品からお土産を選ぶのも楽しみの一つだ。