石巻市 アイトピア通り界隈
石巻市は古くからの港町である。藩政時代には太平洋側の海運と、北上川河口の舟運が交わる水運の拠点として物と人が集まり栄えた町だ。ここから米などの荷物を積んで江戸へ運び、帰りには江戸からさまざまな物資を持ち帰ったという。そんな歴史を刻んでいるのが観慶丸商店。その名前自体も千石船「観慶丸」を継いだもの。明治になって陶磁器を売る商店となり、約90年前にこの大通りに移転し、石巻初の百貨店となった。曲面を巧みに取り入れた建物、丸窓、美しいタイルで装飾された外観に当時の人々はどんなにか目を見張ったことだろう。東日本大震災では、この一帯に2m近くの波が押し寄せた。「1階部分は浸水したものの、建物の倒壊は免れました。
その後改修を経て、2017年4月に復興のシンボルとしてよみがえりました。自由に見学できる1階2階を案内しながら、一般社団法人ISHINOMAKI2.0のスタッフの方が教えてくれる。内部を見れば、太い梁と柱。日本伝統の強い構造と全面タイル張りの外観が一体となって建物を守り、そして今、私たちが目にすることができるわけだ。旧観慶丸商店は石巻市指定文化財であるとともに、1階は市民に開かれた文化施設として活用されている。通りまで舞台として活かす演劇祭が行われ、1月にはエチオピアンローズに触れるイベントが開催されエチオピア大使も来場したそうだ。改めて街並みを見れば、通りの向かいにも趣のある建物が。
こちらは1925年(大正14年)に建てられた旧東北実業銀行だ。2つの建物の間の通りを南方面へ行くと、アイトピア通り。交差する橋通りには石畳の面影が残り、世界に開かれた港町・石巻の空気を感じずにはいられない。アイトピア通りをさらに進むと、旧観慶丸商店の親戚にあたる観慶丸本店がある。モダンな店構えの中に、江戸時代から続く陶器店ならではの落ち着きのある風格が感じられる。通りを挟んだ向かいには震災後オープンしたギャラリー・カンケイマルラボをはじめ、石巻の今を刻む魅力的な店舗も多く、新旧の港の風に吹かれてみるのもいい。