凍み豆腐
正月のお雑煮、祭りや田植えなどのごちそうに欠かすことのできない凍み豆腐は、かつては農家の自家用や副業として作られたものです。とりわけ大崎市岩出山地区付近一帯は特産地として知られ、色白でふんわりとした口当たり、品質の良さで名声を高めてきました。現在の岩出山凍み豆腐の製法は、天保13年(1842年)、豆腐屋だった齋藤庄五郎が、伊勢大神宮や金毘羅様参詣の折に、奈良で製造を習い、弟子たちに教えたのが始まり。「凍みらせながら乾燥させる」ことから「凍み豆腐」と呼んだ。
岩出山の凍み豆腐のおいしさの秘密は「おいしい水」と「最適な気候」、さらには良質の大豆」にあります。特に宮城県のミヤギシロメやタンレイを原料にした凍み豆腐は、きめ細かく滑らかです。凍み豆腐づくりは、手間がかかり、全工程に細心の神経を使います。とりわけ、冬の夜に凍結させる時の気候が製品の良し悪しを決めるので、気が抜けません。しかし、近年は生産者の高齢化などで機械化が進み、天候に大きく左右される屋外凍結や天日干しも減りました。
凍み豆腐作りの主な工程は1)大豆を水に浸す。2)大豆を挽く(昔は石臼でひいていた)。3)釜で煮る。4)ゴ(豆汁)を搾る。5)ニガリを入れて寄せる。6)型枠(木箱)に流し入れて固める。7)板にのせて冷まし、棚で寝かせる。8)豆腐を切る(大断ち・小断ち)。9)切った豆腐をすのこに並べる。10)干場で凍結させる。11)凍らせたまま集めて莚をかけ、二、三日寝かせる。12)凍らせた豆腐をぬるま湯で解かして搾り、ミゴ(ワラの芯)で編む。13)竹竿にかけて日光と寒気で乾燥させる。「凍る、解ける」を繰り返す。地面に雪があればより白く仕上がるという。製造工程が機械化された今でも、大断ち、小断ち、豆腐編み、天日干しは手作業です。中でも豆腐編みは熟練が必要で、「編み子」と呼ばれる編み歴五十年余のおばあちゃんたちに支えられています。凍み豆腐は栄養的に優れ、保存がきき、野菜や魚介、昆布などとの煮しめや雑煮、汁物などの常備品として重宝されています。