活用範囲が広い「はっと」
宮城県では仙台藩時代から米作りが農業の中心でしたが、日常の食べ物は雑穀が主体だったので、さまざまな工夫がされてきました。「汁はっと」もその一つで、当時はみそ味で、直接汁にはっとをつみ入れて作りました。汁の具は、季節の野菜と凍み豆腐、油揚げ、ズイキ、キノコなどでしたが、最近ではだしに煮干しではなく、鶏肉を使うことが多くなりました。汁はっとは、季節を問わずご飯が足りない時に作って食べたようです。
また、「小豆ばっと」は、小豆あんを使ったあんこ餅、小豆だんご、おはぎなどと異なり、冷めても独特の歯触りがあっておいしい。漉しあんの場合は、つぶあんより一割ほど増やすとよいとされています。はっとは応用範囲が広く、このほかにも、「ずんだはっと」「小豆粥ばっと」「ごまばっと」「じゅうねんはっと」などもあり、それぞれ独特の味わいが楽しめるように工夫されています。
そして、極めつけは「かぼちゃばっと」でしょう。年間で一番日が短いのが冬至ですが、寒さが本格的になってくるのもこの時期でしょう。冬至にかぼちゃと小豆をいっしょに煮た「冬至かぼちゃ」を食べる習慣がありますが、県北では、それに粥とはっとを入れる習慣があります。冬至に冬至かぼちゃをたべると脳卒中にならない、風邪をひかないなどと言われてきましたが、それはその時期の気候の変化を念頭においてのことでしょう。フーフー言いながら熱々のを食べると体が温まり、深まる寒さへの備えとしました。また、ビタミンAとCが豊富なかぼちゃや小豆などに悪病を払う願いを込めたのでしょう。夏野菜のかぼちゃを冬至用に大切に保存し食べたのです。