油麩
お盆になると、どこの豆腐屋も精進料理に欠かせない豆腐、油揚げの製造に追われた。現在のような冷凍設備がない時代は、豆腐や油揚げが日持ちしないのが悩みで、明治末ころ、登米市登米町地区の豆腐屋がおいしくて日持ちのする商品として考案したのが油麩でした。小麦粉に水を加えて、こねたものを水で洗い流すとネバネバしたガムのようなグルテン(モッチ)が残る。麩はこのグルテンが主原料で、タンパク質が多く栄養的にも優れています。麩には、生麩と焼き麩があり、生麩は、グルテンにモチ米粉を加えて練って蒸したものです。
東北では棒麩や板麩、豆麩などの焼麩がよく食べられてきました。油麩は、グルテンに小麦粉を混ぜ合わせ棒にかけて飴のように何回も伸ばし、1ないし1.5㎏の塊に丸めて水の中で寝かせる。これを太さ1.5cm、長さ20cmの棒状に延ばして油で揚げる。途中カミソリで縦に4本切れ目を入れて、曲がらないようにします。製品の出来は気候(気温、湿度)の影響を受けやすい。夏はグルテンが伸びるので、曲がらないようにする。
油で揚げているので、風味があり、歯ごたえと柔らかさのバランスもよく、しかも日光と湿気に注意して保存すれば、かなり日持ちします。現在はグルテンに加工した粉末や、冷凍したものを輸入して原料にしているので、前よりは作業が楽になりました。とはいってもまだまだ手作業に頼る部分が多い。最近まで登米地方だけでお盆のころに食べられており、製造も夏だけに限られていました。しかし、ふる里を離れる人が多くなり、懐かしい味の贈答品として全国にその美味しさが知られるようになり、登米地方以外でも大量に生産されるようになりました。